ふくしまワンデイドライブ

part③温泉だけじゃない!歴史も人情もアツイ!@中ノ沢温泉

会津

こんにちは、トヨタレンタリース福島 サトウです。
今回のワンデイドライブは、魅力がいっぱい!中ノ沢温泉からシリーズでお届けしています。▶「中ノ沢温泉part①パワースポット編」▶「中ノ沢温泉part②グルメ編」はお楽しみいただけましたでしょうか?

「この温泉街を、いつもと違った角度から楽しんでほしい!」中ノ沢温泉の名物食堂『小西食堂』4代目西村和貴さんの提案で、part③では中ノ沢温泉の歴史について深堀します。

◆名曲のモデル「高原列車は行く」はどの路線?

中ノ沢温泉」は、猪苗代と福島を結ぶ国道115号線、郡山・磐梯熱海へ抜ける母成グリーンライン、猪苗代湖、磐梯高原、会津若松など各方面に足を延ばしやすく、アクセスの良さから手軽に行けるとして幅広い年齢層に人気の温泉地です。

とても静かな温泉街ですが、福島市出身の作曲家、古関裕而(こせきゆうじ)先生のヒット曲「高原列車は行く」の舞台でもあり、古関先生をモデルにした(NHKの連続テレビ小説「エール」2020年)の放送でも話題になりました。

歌に唄われたのは中ノ沢・沼尻両温泉の湯治客を運んでいた「沼尻軽便鉄道(ぬまじりけいべんてつどう)」と言われ、当初は、沼尻鉱山の硫黄鉱石輸送が目的で敷かれてたそうです。

■写真:中の沢保育所脇にある「高原列車は行く」の歌碑

また「高原列車は行く」を作詞した丘灯至夫(おかとしお)先生のエピソードによると、子どもの頃、体が弱かった為、よく家族に中ノ沢温泉の湯治へ連れられ、そこへ行くために磐越西線(ばんえつさいせん)・川桁駅(かわげたえき)から分岐していたのが「沼尻軽便鉄道」 その記憶が「高原列車は行く」の歌詞を創り出す形になったと言われています。美しい山々を思い出させ、あの軽快な歌詞やメロディが生まれた時代背景とは…🤔

◆温泉街に一歩足を踏み入れたら立ち寄り必須「中ノ沢温泉旅館案内所」

「中ノ沢温泉に来たらここは外せない!」と、西村さんに案内され訪れたのが、温泉街の入口ににある「中ノ沢温泉旅館案内所」。地元を知り尽くしたスタッフによるおもてなしが魅力の観光案内所です。

何か特徴がある案内所なのかなぁ~と興味津々、さっそく中に入ると、”ザ!昭和”と言った雰囲気!

案内所で見かけるイラスト地図も手描きの味わいと、現地ならではの情報が盛り込んであり、このローカル感が良いですよね♪

「中ノ沢温泉てどんなところ?」ここを読んだだけでも知りたい!聞きたいがたくさん!

実はこちらの案内所、ある意味”パワースポットのような存在”となっているのですが…と言うのも、案内所で働く、安部なかさん・72歳(通称なかちゃん)がいるから。(沼尻鉱山と軽便鉄道を語り継ぐ会)や(中ノ沢たこ坊主会)などで語り部としても活動され、軽便鉄道ファンからは(軽便おばさん)と親しまれています。

なかちゃんに会うと元気になれる!」と周りから言われるくらい、明るくてとってもパワフル!動くパワースポットのような人です!

■写真:(左)安部なかさん

「なかちゃんは、この温泉街で一番アツイ人だから!」と西村さん。地元の人でしか知りえないような言い伝えや、ガイドブックには載っていない貴重なお話しをたくさん聞かせてくださいました。

あ!ここにも「たこ坊主」❤やっぱり目が合うんだよなぁ~😉

◆語り継がれる硫黄鉱山と軽便鉄道

はじめに、今回のお話は、当時の記録を残した写真集「懐かしの沼尻軽便鉄道」をもとに伺いました。写真集制作には、なかちゃんが中心となり自費出版されたものです。

日本が大きく変わろうとしていた明治から昭和の時代にかけて、猪苗代の産業発展を大きく支えた沼尻鉱山(ぬまじりこうざん)。安達太良山の西斜面標高1,000m以上にあり、古くから硫黄の採掘が行われていました。また、中ノ沢温泉の源泉である沼尻元湯は江戸時代中期に発見され、硫黄鉱山の温泉として利用されていたと言います。当時、国の政策として、この地下資源に目を付けたのが「近代日本経済の父」と呼ばれる実業家(渋沢栄一)と言われ、従兄に当たる(渋沢喜作)がこの沼尻鉱山区を取得。次男(渋沢仁之助)に初代の鉱山長に据え、硫黄の鉱石では当時日本一の採掘量を誇っていたそうです。

ところが渋沢仁之助が鉱山長に就任後、僅か3年後の明治33年7月、安達太良山の大噴火により鉱山は全滅してしまいます。一瞬にして、鉱山長だった仁之助以下、死者82名の死者を出す大惨事となり、ほとんどが生き埋めになったことを悔やんだ渋沢家親族は、一周忌を迎えた際、中ノ沢温泉に鎮座する湯泉神社の境内に供養碑を建立し、仁之助と従業員並びにその家族たちの冥福を祈ったとされています。

■写真:湯泉神社の境内に供養碑

その後、明治39年に岩代硫黄(株)が継承し採掘が再開、明治40年、事業を拡張し日本硫黄(株)が設立。精錬所を移設し、大正2年には沼尻鉱山からケーブルで運ばれた硫黄を輸送するため「軽便鉄道」が敷かれ、県内屈指の硫黄鉱山となりました。

人の住むことのなかった場所が、硫黄鉱山によって、最盛期には産業に関わる約2,000人と家族が住む一大集落が形成され、小学校や病院までもができたそうです。

■写真:「沼尻の思い出」より転載

しかし昭和40年代前半に入ると、石油を精製する硫黄が市場に流通しはじめ価格が急落、経営は悪化し鉱山は全面閉鎖廃山に。

時代の流れから軽便鉄道は「ガソリンカー」さらに「ディーゼル機関車」に切り替えて走り続け、鉱山の盛衰後は旅客輸送に注力しますが経営は振るわず、惜しまれつつもその歴史に幕を閉じることになるのです。

■写真:磐梯山麓を走るディーゼル機関車。客車とともに硫黄を積んだ貨車をけん引しているのが分かります。

◆人々の暮らしと夢や希望を乗せて

「軽便鉄道は大正2年から昭和44年までの57年間、JR磐越西線の川桁駅と沼尻駅の全長15.6キロを1時間弱かけて走り、当時この地方でただ一つの交通機関だった。その姿から(マッチ箱)の愛称で呼ばれ、冬場は乗客も線路に降りて除雪するほど、みんなから親しまれてた。鉱山の好景気ともに、大正15年には沼尻スキー場が開業し、首都圏からは湯治客やスキー客も運ぶようになって、沼尻へ向かう列車は乗客で大賑わい!」

「私は高校の通学にも使ったが、軽便は生活の足であり、東京につながるという憧れでもあった…」と賑やかだった時代を振り返ります。

当時の写真を見ているだけでも、大勢の人で賑わい、楽しい笑い声が聞こえてきそうです。

◆軽便の火が消えても街の灯はともし続ける

最後に、なかちゃんが大事に保管してあった立派な硫黄を見せていただきました。昭和8~14年頃、硫黄は化学繊維やパルプ、ゴム製品などの染科科学薬品をつくるための必需品として用途が拡大。生産も急増し硫黄価格は高騰「黄色いダイヤ」と呼ばれるほどに。

「線路脇に落ちているきれいな硫黄鉱石を拾うのが好きでね..」

「温泉もスキー場も生活道路も、すべては鉄道が導き築いてくれたもの。町の発展は軽便なくしては語れない。鉄道は町の歴史とともにあった」と、なかちゃんは誇らしげに語ります。

現在ではレールが剥がされ跡形もなくなり、町のに賑わいがすっかり過去のものとなった中で、鉱山と鉄道の歴史を次の世代につなぐため、なかちゃんは様々な活動に取組んでいます。その中でも「沼尻を訪れる人に昔と同じ路線を歩いてもらおう、そして中ノ沢で昔と同じおもてなしの心でお迎えしよう」と、沼尻軽便鉄道の軌道敷跡およそ(約20,000歩)を歩く「いなわしろ軽便鉄道ウォーク」を企画しイベントを開催。毎年県内外から多くの人が集まってくれるそうです。

■写真:猪苗代町商工会青年部

昭和の高度成長期を支え多くの人々に愛されてきた軽便鉄道。廃線から50年以上経った現在も、多くの人を惹きつけてやまないのは、先人の情熱や人情が紡いできた軽便の歴史を今も守り語り継ぐ、なかちゃんの姿に心を動かされるからなんだと思います。

人の気持ちが人を動かすなかちゃんが何度もおっしゃった言葉です。
私もこの言葉を大事にしていきたい!そう胸が熱くなりました。

歴史と共に形成された温泉街の旅情を味わうことも、温泉の楽しみ方の一つ。地元ならではの語り部のお話しは、それぞれの物語があり、より一層、その土地の魅力を満喫できると思います。

今回なかちゃんにお会いすることが出来て、本当に実りある取材旅となりました。これからも街の灯がともり続けるよう応援しています!ありがとうございました。
取材にご協力いただいた、沼尻温泉(ぼなりの森)様ありがとうございました。

そうそう、なかちゃんの愛車ジムニーも軽便と同じ塗装にしてあるんだとか(軽便愛が凄すぎる😉)

◆ちょっと足を延ばしでタイムスリップ

中ノ沢温泉から車で約20分。猪苗代町の「アクアマリンいなわしろカワセミ水族館」にある(猪苗代緑の村)に当時の車両が上屋付きで大切に保存されています。

■写真:12t級C型ディーゼル機関車DC121(地元福島の協三工業製:全長5,790mm)

客車は2両で、中に入ると、鮮やかな緑のシートと車内は手を伸ばせば天井に手が届き、また両手を広げるとちょうど車体の内寸に達するほどの小さい車両。客車には自由に乗ることもできるんですよ。

鮮やかな緑のシートと木製ヨロイ戸も残る車内はレトロ感いっぱい。耳をすませば、当時のままのダイナミックな走行音が聞こ聞こえてきそうです。

まだまだ中ノ沢温泉の旅は続きます。次回は大人が童心にかえる宿??お楽しみに!

【中ノ沢温泉旅館案内所】
住所:福島県耶麻郡猪苗代町蚕養沼尻山甲2855
電話:0242-64-3449

【猪苗代緑の村】
住所:福島県耶麻郡猪苗代町長田東中丸344-4 アクアマリンいなわしろカワセミ水族館敷地内
電話:0242-65-2841


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