ふくしまワンデイドライブ

祝・只見線!郷土写真家星賢孝さんと巡る絶景ドライブ旅~最終章~

会津

◆奥会津の絶景 霧幻峡~神秘の夏

こんにちは、トヨタレンタリース福島 サトウです。

前回までの記事はこちら▶星賢孝さんと巡る絶景旅① ▶星賢孝さんと巡る絶景旅②
▶星賢孝さんと巡る絶景旅③

郷土写真家 星 賢孝さんと巡る奥会津の旅のラストは、かつて星さんが生まれ育った廃村集落(金山町三更・みふけ)を訪れました。旧三更集落は約50年前に鉱山跡の土砂崩れで壊滅し廃村。かつて生活の足として集落と対岸を結んでいた只見川の「渡し舟」も消滅していましたが、2010年に星賢孝さんが「失われた集落の証しとともに原風景を伝えよう」と地元住民と尽力し、渡し舟の文化を復活させました。


■写真:星 賢孝

夏の早朝と夕方に、只見川の渓谷を漂う川霧があまりに幻想的であったことから、星さんが「霧幻峡(むげんきょう)」と名付け、川霧のなかを進む渡し舟は「霧幻狭の渡し」と呼ばれ、只見線と共に絶景スポットとして一躍世界でも有名に。現在渡し舟は観光用として、6名の船頭さんが国内外から訪れるお客さまをご案内しているそうです。

2020年6月13日の福島民報新聞には、スマートフォン向けRPG『FGO(Fate/Grand Order)』とのコラボ広告『霧幻峡×燕青』が掲載されました✨燕青「夢幻の渡しと言うのなら、この拳舞、主人(マスター)の夢に捧げよう」幻想的な世界観が合う!

◆霧幻峡へのアクセス

実はふくしまワンデイドライブを初めた2018年11月、霧幻狭を訪れていたのですが、あいにく星さんの船頭とはいかず..それでも美しい景観美に感動したのを覚えています。

今回は念願叶い、星さんの船頭で霧幻峡や三更集落を案内してもらえることに!川霧が発生するという早朝6時、JR只見線早戸駅側の船着場で星さんと待ち合わせ。ちなみに船着場はJR早戸(はやと)駅から歩いて3分の場所。車で訪れる際は、気を付けていないと看板を見逃してしまうこともあるので、国道252号で早戸駅を目指して下さいね。

案内看板を見ると、ほかの見どころもいっぱい!

※「霧幻峡」という名前は俗称であり実際に地名として残ってるわけではないので、調べる際は注意してください!

◆かつての日常を今に伝える~渡し舟

到着すると、すでに星さんは船頭としてスタンバイ中!今回のコースは、船着場から乗船し約15分ほどかけて只見川を渡り、三更集落の船着場を目指します。30分ほどかつての集落を散策した後、再び15分かけて渡し舟で戻ります。


■情報:金山町

この日は私たち以外にも、星さんや霧幻峡のファンで何度も乗船している方々とご一緒させていただきました。安全に楽しむためにライフジャケットを身に付けて出発です!
(※霧幻狭の渡しは、5~6人乗船できますが、貸し切りが基本になっています)

ゆっくりと右に左にと器用に櫂(かい)を操る星さん。船頭としても立ち姿がキマッてる!

かつて三更では集落全戸が渡し舟を持ち、誰もが舟を漕ぎ対岸の早戸との間を行き来していたそう。自らも漕いでいたことから、水面をすべるように舟を走らせていきます。今回、乗船させていただいた舟は、昔、星さんのお父さまが作られたものだそうです。

■写真:星賢孝(写真は昭和37年 中央は若き頃の星さん)

乗船してすぐ、JR只見線の「細越拱橋:通称 めがね橋」を渡る列車が見え、列車の乗客もこちら側にお互い手を振り合ったりして、なんだかほっこり。船上から見る只見線の眺めもまた良いものです..

■写真:星 賢孝(※めがね橋は只見線人気の撮影スポットの一つです)

只見線の絶景!少しのシャッターチャンスも逃さないでくださいね!

下流へ進んで行くと只見川の向こう岸には、早戸温泉(つるの湯)も見えてきて、何だか幻想的な雰囲気に..
ちなみに、つるの湯は開湯約1200年、何でも只見川渓谷の巨岩の下に一羽の鶴が飛来して、こんこんと湧き出る温泉に、鶴が傷ついた足を浸していたのを農民が見つけ、自らも入浴を試みたところ、一浴にして手足の傷や腰痛疲れが癒され、その効能に驚喜したのがきっかけと言われ、現在も薬湯として人気だそう。只見川を眺めながら一度は浸かってみたいなぁ..♨

◆船上からの絶景~神秘な世界

「昨日の朝は綺麗な川霧がでていたんだけどなぁ..」と星さん。夢にまで見た川霧ですが..残念ながらこの日は発生せず…😭晴れている日よりも曇りや雨の日の方が霧が発生しやすいと聞いていたのですが、尾瀬の雪解け水を源流とする只見川は夏でも冷たく、湿度80%かつ水温と気温の温度差が18℃以上という条件をクリアしなければ川霧は発生しにくいそうで、年間を通しても発生する日は30日と言われているんだとか。まさに..幻~☝💦


■写真:星 賢孝(只見川の川霧に包まれると、まるで夢の中のような幻想的な世界に)

それでもこの日は風もやさしく水面がとてもおだやか。数日前からの雨もあり、只見川には土砂が流れ込んできれいな碧色は見られませんでしたが、緑色の水面を鏡のように、橋梁や周囲の山々を映しとっていました。

ゆっくりと変わる景色、緩やかな流れが心地いい。

どんどん下流に進むと、目の前に現れるのが真っ赤な「早三橋」や、かつては住民に怖がれていた、「湯の上場崖(ゆのかみばっけ)」と呼ばれる、高さ56m、その幅200mの豪快で壮大な岩壁をつぶさに見ることができます。

小さな滝まで神秘的..

昔の発電所跡、このあたりは水深30mほどで水の流れはほとんどなく水面が鏡のようになる半面、よどんでしまうこともあるのだとか。

賢孝さんの感銘深いエピソード①
「昔、三更集落に東北電力沼沢第二発電所計画があった。集落のひとたちも役場も賛成したが俺と親父で反対した。俺の家でハンコをつかなかったので発電所はできなかった。あの当時から俺は、この景観をを守りたいと闘っていたよ」発電所はその後計画を変更し地下に建設され、霧幻峡の景観が守られた訳です。あとで地下にできた発電所のパンフレットには「自然環境に配慮して地下に発電所をつくりました」と書いてあるを見て賢孝さんは驚いたそうです。

景色にただ見惚れるだけではなく、三更集落からの渡し舟の歴史を知る星さんのお話に、どんどん引き込まれていきました。

◆日本の原風景~タイムスリップ

霧幻狭は川の流れはほとんど感じません。対岸に向かうギーッ、ギーッと舟を漕ぐ櫓(ろ)の音がわずかに響き、逆にこの地の静けさを際立たせます。「あの青い屋根が集落に残った古民家、これから案内すっから」と集落を指さす星さん。ここからは廃村した「旧三更集落」の散策です。

対岸の旧三更集落の船着き場に降りてからは、木立に囲まれた一本道を辿ります。

昭和39年に裏山の硫黄鉱山跡が大規模に崩壊し一瞬にして土砂に埋め尽くされて廃村になった旧三更集落。10戸ほどの小さな集落でしたが、度重なる土砂崩れに遭い、集落ごと移転を続け、三度目の移転先だったことから、集落の地名が「三更」になったと言われています。「舟は一家に一艘(そう)あって、対岸に渡る唯一の手段だから、雨の日も大雪の日も激流に流され大変な苦労をしながら川を渡ってた。物心つくころには俺1人で舟に乗ってたよ…」最後の土砂崩れが起こるまでの300年間、集落はここで営みを続けてきたそうです。

集落には沢や滝が流れ、マイナスイオンに包まれています。日頃の疲れをリフレッシュ!

さらに先に行くと子安観音堂の札と石碑だけが残された場所が。旧三更集落の300年の歴史を紡いできた貴重なお堂は、私たちが集落を訪れた数ヶ月前、豪雪で無残に破棄されてしまったそう。その昔は、子宝や安産と子供の健やかな成長を願う人達がたくさんお参りに訪れて賑わっていた大切な場所だといいます。

「早急に復旧させなくちゃなんない」地域の歴史や文化が失われつつあることを危惧し、クラウドファンディングなどの支援を募りたいとおっしゃっていました。

船着き場から歩いて10分、今は更地に草が生い茂っていますが、星さんの生まれ育った家の跡地が。その広さから大きな家があったことは想像できました。

坂道が続き、只見川を見下ろすような位置まで登っていくと、集落見守るように立つお地蔵さま。裏山崩壊の際、流れてきた土砂がお地蔵さまの手前で止まったと言います。それだけに、ここは物凄いエネルギーを感じる場所..(※霧幻峡のシンボル「霧幻地蔵」は昭和19年に星さんのお父様が村を守ってほしいという願いから建てられたそうです)

お地蔵さまの後ろには、船上から見るのとはまた違った絶景ポイントが。奥会津らしいのんびりとした時間に癒されます。(※写真の右側、只見川渓谷の高台見えるのが廃村となった三更住民の集団移転先である雨沼集落)

さらに奥へ進むと、船上から見えていた古民家が、集落に一軒だけ残っています。手を加えられていますが、約300年ほど前に建築されたとは思えないくらいしっかりした古民家です。豪雪でも出入りができるよう、玄関を母屋と直角にして落雪を玄関両脇に落とす、典型的な雪国仕様の曲がり屋です。

ガラガラガラ..なつかしい引き戸を開けると..300年の豪雪にも耐えた煤(すす)で黒光りする太い柱や、古い道具、天井裏には蚕小屋など当時の生活を偲ぶことができます。

昔ながらの生活の音がいまにも聞こえてきそう。

■写真:星 賢孝

「霧幻庵」と名付けられた古民家は、現在横浜市在住のオーナーさんが管理されています。水道は通っていますが、ガスはなく電気はソーラーのみ。星さんに許可をもらえれば宿泊体験できるそうです。本当の非日常を満喫できるかもしれませんね。

◆霧幻狭~縁結びスポット

霧幻庵の裏には長い石段があり、その先には、三更集落誕生と同時に建造した「大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)」があります。昭和39 年の三更集落裏山の大崩壊でも神社は被災を免れたことから、地域の守り神として絶大な信仰を集めています。

小さなお宮は集落唯一の社として、集会や山ノ神等の講事は全てここで行われていた場所。また当時の若者たちの唯一の逢瀬の場であったとも言われ、神社の板張りには、「ここで秘め事をする者は性病になるぞ」という脅し文句が書かれたままに..現在でもその痕跡がリアルに残っています。

境内で目を引くのがハート型の小窓のある石灯籠。これは“猪目”と呼ばれる文様で魔除けや火除けの意味で彫刻されていると言われています。神聖な火をともす石灯籠は、大切なともしびを守るものとして、独特の風情を生み出しています。

「ここで集落の多くの若者が結ばれていったんだ..」そう言って星さんも❤のポーズ!
何とも可愛らしいハート型と星さんのエピソードに、間違いなくご利益がありそうな予感..❤

集落廃村となって60年。雨沼集落へ移転した人達は今も訪れて参拝を絶やさず、集落の守り神として敬っているそうです。そのせいからか廃村したとはいえ、思いのほか人の気配が..。

◆生命はぐくむ泉~滾滾(こんこん)清水

旧三更集落から約800メートル離れた雨沼集落へ向かう道沿いに、滾々と湧き出る清水がありました。「滾滾(こんこん)清水」は、山上湖でカルデラ湖である沼沢湖の浸透水が、深い地下に濾過されて突然に湧きでているもの。水源の周囲は木々に囲まれてひんやりとした空気に包まれ、暑い夏には絶え間なく流れる水のせせらぎに癒やされる~♪

星さんのすすめで湧水を飲んでみることに。実際の感想として、口に含んだ時に味が何も残らず口の中がさっぱり!私の好きな日本酒で言えば「切れが良い」って表現がぴったりかも!

湧水も決して永遠のものではありません。自然の恩恵にあやかれるからこそ、いつまでも大事にしていこう..星さんがきちんと管理し、大切にしている清水であることが分かります。

流れ清水ではないこの聖水は、天下の名水として古来より地域住民を潤してきたことから、その聖水を求める人が増えているそうです。

◆変えられない宿命

最後にもう一つ賢孝さんの感銘深いエピソード「俺は高校を卒業して東京の会社の入社試験を受けた。あとで親に訊いたら“不合格だった”と教えられた。そして地元の建設会社に就職。親父が先に亡くなり、母親が亡くなるとき、母親が俺に“実は東京の会社は合格していた”と言うわけ。あの世まで持っていけなかったんだな。親は俺に東京に行かれては困るから嘘をついたんだ。でも俺は両親に感謝しているよ。地元にいたからこそこうやって好きな写真を撮って、奥会津を発信できるんだから」。星さんの言葉には故郷への思いがにじんでいて、見えない地道な努力があってこその今なんだ..とつくづく思いました。

今回の旅で、私が撮影したお気に入りの一枚。大山祇神社を囲むご神木と、大鳥居の前での星さんはこの集落の守り神のようです。

◆あの話題作のロケ地に!?

近年、度重なる厄災から逃れたこの地は、訪れた人の運気を上げ、願い事を叶えるパワースポットとしても注目されています。そしてとうとうこの話題作のロケ地に!?公開が楽しみですね。

◆人生に一度は訪れたい~奥会津の絶景

2022年10月1日に全線運転再開となったJR只見線。多くの鉄道ファンや観光客で賑わい、活気が一段と戻ってきています。沿線には途中下車して楽しみたい絶景ポイントや立ち寄りスポットが点在しているので、ぜひ鉄道旅と合わせて「霧幻峡の渡し」を堪能してみてはいかがでしょうか。感動!癒やしのパワースポットが皆さんを待っています..

船着き場に戻るとこんな光景に出会えました!早戸駅は、電車を降りると線路のすぐ脇が只見川!こんな光景はめったに見られないですよ。

◆おわりに..

夏の只見川に川霧が出る幻想的な景色を、星さんの作品で知ることになった霧幻狭の渡し。あいにく梅雨の晴れ間となって、渡し船に乗る頃には川霧はなくなってしまったものの、この場所でしか感じることのできない特別な空気に包まれていました。

■写真:星 賢孝(夏の時期、川霧が立ち込める霧幻峡)

何百年もの間、人々が守り続けてきた集落を散策し、自然が息づく日本の原風景に心癒されました。変わらずこの景色は守り抜いてほしい。ふくしまが世界に誇れる大切な場所だと思います。

星さんの人柄にも惹かれ、忘れられない2日間を過ごすことができました。この旅での一期一会を大切に、これからも奥会津の魅力を発信していきたいと思います。
星さん、奈都美さん、ありがとうございました..

■霧幻峡の渡し(むげんきょうのわたし)
場所:JR只見線早戸駅そば舟着場
アクセス:JR只見線早戸駅から徒歩2分
電話:0241-42-7211(金山町観光物産協会)
期間:4月下旬~11月中旬(日の出~日没)※5日前までに要予約
料金:周遊プラン(約45分、3名まで6,000円、4名以上は1名あたり1,800円)、散策付プラン(約90分、3名まで8,000円、4名以上は1名あたり2,500円)※2022年11月現在の料金


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